わが家の末っ子、あかり。
今ではすっかり家猫として暮らしていますが、実は一度だけ、わが家から脱走したことがあります。
しかも、数時間や一晩ではありません。
一週間です。
そして、一週間ぶりに帰ってきたあかりを待っていたのは、思いもしなかった出来事でした。
数年前、チロが破った網戸
わが家の風呂場には、破れた網戸がありました。
破った犯人は、あかりではありません。
チロです。
しかも、数年前のことでした。

「破れているなら、張り替えればいいじゃないか」と思われるかもしれません。
ところが、この窓には家の外側に格子があります。
そのため網戸を簡単に外すことができず、張り替えられないまま月日が経っていました。
そして、ある日。
その破れた網戸が、思いもしなかった「あかりの脱走口」になってしまったのです。
何で、あかりが外にいるんだ⁉️
その日の朝。
目を覚ましたとき、あかりは確かに私の足元にいました。
だから、あかりが脱走したことにすぐには気づきませんでした。
その後、ほんのわずかな隙をついて、あかりは風呂場の破れた網戸から外へ出たのでしょう。
しばらくして、私は窓越しに一匹の黒猫を見ました。
あかりによく似ています。
いや――。
これは、あかりだ!
何で外にいるんだ⁉️
間違いありません。
そこにいたのは、わが家のあかりでした。
そして、窓越しに私を見るあかりの表情が、今でも脳裏に残っています。
まるで、
「私は自由になった。」
そう言わんばかりの顔で、こちらを見ていたのです。

私は、あかりを無理に探さなかった
私は、脱走したあかりを無理に探すことはしませんでした。
帰りたければ、戻ってくるだろう。
帰りたくなければ、これから野良猫として生きていくのだろう。
ただ、それだけ。
あかりが選ぶことだと思いました。
しかし、一日経っても帰ってきません。
二日、三日……。
そして、あかりのいないまま一週間が経ちました。
私は、あかりがこのまま帰ってこないことも受け入れ始めていました。
土曜日の朝、聞き覚えのある鳴き声がした
あかりが脱走してから、一週間が経った土曜日。
朝、目を覚ました私は、どこからか猫の鳴き声が聞こえることに気づきました。
聞き覚えのある声でした。
あかりだ。
はい。紛れもなく、あかりでした。
一週間、どこで何をしていたのか。
それは、あかりにしか分かりません。
私は何事もなくサッシを開けて、あかりを家に迎え入れました。
おかえり、あかり!

ところが、ハナがあかりを受け入れない
これで、また元の生活に戻る。
私はそう思っていました。
ところが――。
本当に大変だったのは、ここからでした。
一週間ぶりに帰ってきたあかり。
私にとっては、もちろんいつものあかりです。
ところが、ハナの反応は違いました。
あかりが近づこうとすると、
「シャーッ!」
ハナが威嚇します。
あかりがまた近づく。
「シャーッ!」
何度も、何度も。
つい一週間前まで一緒に暮らしていた二匹なのに、ハナはまるで知らない猫が家の中に入ってきたかのように、あかりを警戒するようになってしまったのです。


私はハナに何度も言いました。
「この子は、あかりだよ。忘れたのか?」
もちろん、私の言葉をハナがどこまで理解していたのかは分かりません。
それでも、何度も言い聞かせました。
この子は、あかりだよ。
ずっと一緒にいた、あかりだよ。
ハナが、あかりを思い出した
それから、さらに約一週間。
あるとき、二匹の様子が変わりました。
ハナが、あかりを舐め始めたのです。
ペロペロ、ペロペロ。
あれほど「シャーッ!」を繰り返していたハナが、いつものようにあかりを舐めています。
私は思いました。
「ハナ、あかりを思い出したんだ。」
そして、二匹はまた以前のように一緒に過ごすようになりました。


一週間前まで、あれほどあかりを警戒していたハナ。
でも、もう大丈夫です。
ハナは、あかりを思い出しました。
そして二匹は、以前のように寄り添うようになりました。
そしてある日、ハナがあかりの体をペロペロと舐め始めました。
その姿を見た瞬間、私は思いました。
「ああ、ハナは本当にあかりを思い出したんだ。」
一週間かかりました。
でも、二匹はちゃんと元の兄妹に戻ったのです。

ハナは、ちゃんと覚えていました。
大好きな、あかりのことを。
「一週間の家出」が教えてくれたこと
今回の出来事で、私は改めてハナの世界を少しだけ知ったような気がします。
目が見えないハナは、私たちとは違う方法で、家族を感じているのでしょう。
匂い、声、足音、気配。
そうしたものを一つひとつ感じながら、「この人は家族」「この子は仲間」と覚えているのかもしれません。
だから、一週間いなくなったあかりが突然帰ってきたとき、ハナにはすぐ「あかり」だと分からなかった。
それでも、一緒に過ごすうちに少しずつ記憶がつながっていったのでしょう。
目が見えなくても、ハナにはハナの世界があります。
私には見えないものを感じ、私には聞こえないものを聞きながら、ハナは毎日を生きています。
今回、私はその世界をほんの少しだけ覗かせてもらった気がしました。
そして、もう一つ分かったことがあります。
ハナにとって、あかりはやっぱり大切な家族だったということです。
これからも、ハナとあかりを見守っていこうと思います。

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