2024年5月26日。
その日は、小雨がやがて土砂降りに変わっていく、そんな天気の日でした。
車検を終えた車で自宅に戻った私は、家の前で偶然、小さな三毛猫を見つけました。

その子は、塀と塀のわずかな隙間に挟まるようにして、動けずにいました。
周りを見ても、母猫らしき姿はありません。
雨は次第に強くなり、このまま放っておくことなど、とてもできませんでした。
私は小さな三毛猫を抱き上げ、自宅のケージに保護しました。
とりあえず、この子に何か食べさせなければ。
私はすぐに車を走らせ、ホームセンターへ子猫用のミルクとウェットフードを買いに行きました。
小さな体でしたが、食欲は旺盛。用意したご飯を一生懸命に食べてくれました。

保護した翌日、私はこの子を動物病院へ連れて行きました。
先生によると、生後8週くらい。
少し目やにが出ていて、猫風邪にかかっていましたが、それ以外は健康そのもの。検査の結果、猫エイズなども問題ありませんでした。
猫風邪は点眼薬で治療することになりました。

点眼を続けると、目はみるみるうちに良くなりました。
元気も食欲も十分。こうして我が家での生活が始まりました。
この小さな三毛猫に、相方が「リイちゃん」と名前を付けてくれました。
目の見えないハナと、リイちゃん
我が家には、目の見えない猫のハナがいます。
ハナは不思議なくらい、子猫に好かれます。
そしてハナ自身も、新しくやってきた子猫をすんなり受け入れてくれる猫です。
目は見えなくても、ハナには新しい子猫が家にやってきたことが、すぐに分かったようでした。
リイちゃんを受け入れたハナは、まるで「大丈夫だよ」とでも言うように、何度も何度もペロペロと舐めてあげていました。

ところが、我が家での生活に慣れてくると、リイちゃんはだんだん本領を発揮し始めます。
遊び盛りのリイちゃんが毎日のように挑んだ相手は、もちろんハナでした。
リイちゃんは、ハナの目が見えないことなど知る由もありません。
何度も何度もハナに飛びかかっていきます。
もちろん、体格差は歴然。いくら元気いっぱいのリイちゃんでも、ハナにはなかなか勝てません。
取っ組み合いになり、ケリケリ攻撃を繰り出しても、ハナは負けません。
最後にハナがリイちゃんをギューッと抱きしめると――
「うにゃーっ!」
リイちゃんの声が響きます(笑)。
それでも懲りないリイちゃんは、次の日も、その次の日もハナに挑戦します。
いつか勝てるとでも思っていたのでしょうか(笑)。
リイちゃんの「ずっとのおうち」を探す
リイちゃんとの暮らしは楽しいものでした。
でも、最初から我が家の子にするつもりで保護したわけではありません。
健康な子猫なら、きっと新しい家族が見つかる。
そう考えた私は、インターネットにリイちゃんの里親募集の広告を出しました。
リイちゃんがこれから先、ずっと安心して暮らしていける「ずっとのおうち」を探すためです。
ありがたいことに、何人かの方から里親になりたいという申し出がありました。
しかし、引き取りの条件などが合わず、なかなかご縁にはつながりませんでした。
そうこうしているうちに、思いがけないところから声がかかりました。
私の相方の飲み友達の女性が、
「リイちゃんの里親になりたい」
と申し出てくれたのです。
彼女は長崎市内に住んでいて、自宅にはご主人と高齢の黒猫がいました。
まずは相性を見るため、トライアルから始めることになりました。
そして、リイちゃんを彼女の家へ連れて行く日。
外は、またしても嵐のような天気でした。
相方とリイちゃんを車に乗せ、彼女の住むマンションへ向かいました。
彼女はご主人と二人暮らしでした。
一緒に暮らしていた二匹の猫の片方が亡くなり、新たにもう一匹、猫を家族として迎えたいと考えていたそうです。
そんなとき、リイちゃんの里親募集を知り、声をかけてくれました。
とはいえ、まず気になったのは先住猫との相性です。
リイちゃんとは別の部屋で過ごさせながら、トライアル生活が始まりました。
ところが――
私たちの心配をよそに、リイちゃんはあっという間に新しい生活に馴染んでいきました。
そして何より、彼女がリイちゃんに夢中になりました。
相方から聞いた話では、彼女は仕事が終わった後の友人たちの数多のお誘いをお断りし、
リイちゃんに会いたい一心で、早々に家へ帰るようになったそうです(笑)。
もちろんリイちゃんも、彼女だけでなく、ご主人にもすっかり懐きました。
こうしてトライアルは無事に終了。
リイちゃんは、正式にこの家の子になることが決まりました。
リイちゃんが「ハナちゃん」になった日
正式譲渡が決まってしばらくして、相方から聞きました。
リイちゃんには、新しい名前がついたそうです。
その名前を聞いたとき、私は驚きました。
新しい名前は――
「ハナちゃん」
でした。
もちろん、里親さんが我が家のハナにちなんで名付けたわけではありません。
たまたま、新しい家族が選んだ名前が「ハナちゃん」だったのです。
でも私には、ただの偶然とは思えませんでした。
我が家にやって来たばかりの小さなリイちゃんを、最初から何の迷いもなく受け入れてくれたハナ。
目が見えないハナは、リイちゃんの姿を見ることはできません。
それでも、何度も何度もリイちゃんをペロペロと舐め、遊び相手になり、ときには小さな体をギューッと抱きしめてくれました。
リイちゃんにとってハナは、我が家で初めてできた「お兄ちゃん」だったのかもしれません。
そのリイちゃんが、新しい家族のもとで「ハナちゃん」になりました。
そして――
あの日、塀の隙間で動けなくなっていた小さな三毛猫は、こんなに立派な女の子になりました。

今では、新しい家族にたっぷり愛されて、幸せに暮らしています。
あの日、あの場所でリイちゃんを見つけることができて、本当によかった。
そして、我が家のハナ。
小さなリイちゃんを育ててくれて、ありがとう。
ハナからハナへ。
これからも、ずっと幸せにね。

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