この子には、華がある
ハナは、目が見えません。
両目とも、まったく見えていません。
でも私は、ハナを初めて見たとき、「かわいそうな猫だ」とは思いませんでした。
むしろ、逆でした。
この子には「華」がある。
そう思ったのです。
目が見えないはずなのに、いつも前を向いていました。
誰かに助けを求めるような姿でもありませんでした。
ただ、そこに凛として立っている。
その姿を見ていると、目が見えている私のほうが恥ずかしくなるような気さえしました。
だから、この子を「ハナ」と名付けました。
「華がある」と思ったからです。

目が見えないハナが、物置の屋根にいた
このころのハナは、まだ外で暮らしていました。
目が見えないのに、ハナは驚くようなことをします。
ある日、ふと外を見ると――
ハナが我が家の物置の屋根にいました。
どうやって上ったのか。
今でも分かりません。

目が見えないから、何もできない。
そんなふうに考えていたのは、人間のほうだったのかもしれません。
私は、この小さな猫の強さに惹かれていきました。
そして、決めました。
この子を家に迎えよう。
この子の目に、私がなろう。
ハナを我が家に迎えた日
こうして、ハナは我が家の猫になりました。
正直に言えば、不安はありました。
全盲の猫と一緒に暮らすのは、私も初めてだったからです。
トイレの場所は分かるだろうか。
ご飯や水の場所は覚えられるだろうか。
家の中で、あちこちにぶつからないだろうか。
そんな心配をしていました。

ところが。
私の心配は、ほとんど必要ありませんでした。
ハナは、すぐに家の中を覚えていきました。
トイレの場所も覚えました。
ご飯や水の場所も分かります。
目が見えないのに、家の中を普通に歩きます。
テーブルにも上ります。
そして、トイレを失敗することもありません。
気がつけばハナは、これまで私が一緒に暮らしてきた猫の中で、一番手のかからない猫になっていました。
両目とも見えない猫が、です。
私はハナの目になるつもりで、この子を家に迎えました。
でも、一緒に暮らしているうちに思うようになりました。
ハナは、私が思っていたほど「助けられるだけの猫」ではなかった。
むしろ、ハナから教えられることのほうが多かったのかもしれません。

なぜ私は、ハナの里親を探さなかったのか
そして今、ハナには大好きな妹がいます。
あかりです。
あかりも、片方の目が見えません。
そして何より、あかりはハナが大好きです。
ハナにくっつき、遊びを仕掛け、ときにはハナが迷惑そうにするくらい(笑)、いつもそばにいます。
だから私は以前から思っています。
もし、この二匹を迎えたいという人がいたとしても、ハナとあかりを離すことだけはできない。
二匹一緒でなければ、絶対にだめだ。
……でも。
これは、きれいごとかもしれません。
本当のところは、もっと単純です。
私は、ハナとあかりを手放したくない。
何億円積まれたって、手放したくありません。
二匹はもう、「保護した猫」ではありません。
私の家族だからです。

これが、今のハナとあかりです。
私が、ハナの最期を看取る
ハナを家に迎えたとき、私は決めました。
「この子の目に、私がなろう。」
あれから、一緒に暮らしてきました。
目が見えなくても、ハナは何不自由なく家の中を歩き、眠り、ご飯を食べ、あかりと遊んでいます。
私にとって、ハナはもう「目が見えない猫」ではありません。
ただの、ハナです。
大切な家族です。
だから、もう一つ決めています。
私が、ハナの最期を看取ります。
いつか、その日は来ます。
でも、それまでは。
一緒にご飯を食べて、一緒に歳をとって、一緒に暮らしていこう。
ハナ。
あの日、君を見て「華がある」と思ったことは、間違っていなかったよ。
これからも、ずっと一緒にいよう。


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